福島第一原子力発電所の事故を受けて、再生可能エネルギーの利用拡大も含め、発電コスト、電力の安定供給、人の健康や生活・自然環境に与える影響など広い視点でのエネルギーのベストミックスの検討が必要となっている。2011年5月にフランス・ドービルで開催されたG8サミットで、我が国は再生可能エネルギーの発電電力量に占める割合を2020年代の早期に20%を超える水準まで高める方針を表明した。再生可能エネルギー(水力、太陽光、風力、バイオマスなど)の利用拡大は我が国が取り組まなくてはならない必須課題であるが、現状では発電電力量に占める割合は10%程度に留まっており、水力発電を除くとその割合は1%程度である。
本調査では、エネルギーのベストミックスの選択には、公衆へのリスク・ベネフィット説明という課題があると考え、発電方式の選択・電力の品質・料金・エネルギー政策に対する意識を問うアンケートを実施した。
本調査は、(1)発電方式の選択や電力料金に関する質問、(2)福島第一原子力発電所事故後の停電・節電など、電力の品質低下に関する質問、(3)今後のエネルギー政策に関する質問で構成されている。
ここでは、第1報として、実施したアンケートのうち、発電方式の選択や電力料金に関するものを集計し、報告する。
調査方法:インターネットリサーチ
調査地域:関東地方
調査対象:20歳以上の男女(株式会社マクロミルのモニタ会員)
有効回答数:合計1030サンプル

1. 電力料金の値上げ:値上げ許容幅は1割未満まで
関東地方の20歳以上の男女に、「再生可能エネルギーの推進」、「原子力発電の安全性の向上」、「火力発電の燃料費の上昇」という理由別の電力料金の値上げについて、どの程度までの上げ幅を許容できるかを尋ねた。図1に結果を示す。値上げを「許容できる」とする回答を合計すると、「再生可能エネルギーの推進」は69.8%、「火力発電の燃料費の上昇」は66.0%、「原子力発電の安全性の向上」は46.6%となった。ただし、「許容できる」という回答のうち、半数以上は「1割未満」と回答していることから、電力料金の上昇は1割未満までが受容可能な目安となるものと考えられた。

図 1 電力料金値上げの許容幅
2. 各発電方式のイメージ:再生可能エネルギーへの期待は大きい
発電方式の選択に関する一般の人々のリスク・ベネフィットの認識を把握するため、電源となる発電方式にどのようなイメージを持っているかを調べた。対象とする発電方式は、石油火力発電、石炭火力発電、天然ガス(LNG)火力発電、原子力発電、大規模水力発電、小規模水力発電、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電、燃料電池などの分散型電源、の11種類である。
リスク・ベネフィットのイメージに関する選択肢は、「日本の主要な電力源とすべき発電方式である」「二酸化炭素を排出しない/排出量が多い」「環境への影響が小さい/大きい」「人の健康への影響が小さい/大きい」「発電コストが安い/高い」「安定供給が見込める/見込めない」「この発電方式を知らない」の12項目とし、それぞれの発電方式に当てはまるイメージを回答してもらった。(複数回答。ただし、「この発電方式を知らない」を選択した場合は、他の選択肢は回答不可とした)。
「日本の主要な電力源とすべき発電方式である」については、太陽光発電(27.4%)、地熱発電(24.5%)、風力発電(17.4%)、大規模水力発電(17.0%)の順に回答数が多く(図2)、再生可能エネルギーを今後日本の主要な電力源にすべきとイメージしている人が多いことがわかった。
一方、バイオマス発電、燃料電池などの分散型電源に関しては、「この発電方式を知らない」とする回答が多く(22.6%、29.0%)、公衆の認知が低いことがわかった(図3)。
以下、図4〜12では、認知度の低かったバイオマス発電、燃料電池などの分散型電源を除く9種類の発電方式について、どのようなイメージ傾向があったかを記載する。なお、本設問は複数自由選択による回答方式であるため、各集計の母数は異なる。
火力発電については、石油火力発電と石炭火力発電は、回答傾向が似ていたことから、合算して集計した(図4)。火力発電は、石油・石炭、天然ガス(LNG)ともに、発電コストが高い、二酸化炭素の排出量が多いという回答の割合が高く、一方で安定供給が見込めるという回答割合もやや高かった。なお、石油・石炭火力発電の結果に比べると、天然ガス(LNG)火力発電(図5)は、環境や健康への影響が小さいというポジティブな回答の割合が高かった。
原子力発電(図6)は、人の健康への影響が大きい(94.0%)、環境への影響が大きい(90.9%)の回答の割合が高かった。当然、福島第一原子力発電所の事故がこの認知に大きな影響を与えていると考えられるが、このような原子力発電に対する事故後の変化については、賛否態度なども含め、第3報で調査結果を報告する予定である。一方で、従来から原子力広報で積極的に伝えられていた、二酸化炭素を排出しない(88.3%)と安定供給が見込める(85.2%)については、いずれも公衆の認識に定着していることがわかる。また、発電コストについては、回答が半々程度(安い:44.4%、高い:55.6%)に割れた。これは、原子力はベース供給力として高稼働率で利用されるため発電コストは高くならないという試算に対して、現在、発電コストの根本的な見直し等が行われはじめており、事故の損害額を原子力の発電コストに含めると高くなるというイメージを持つ人が増えてきていることを反映しているのではないかと推察される。
再生可能エネルギーに分類される、小規模水力発電(図7)、太陽光発電(図8)、風力発電(図9)、地熱発電(図10)については、二酸化炭素を排出せず、環境や人の健康への影響が少ないが、安定供給が見込めない、という回答の傾向がみられた。以下、詳述する。
小規模水力については、環境(二酸化炭素排出を含む)や人の健康に与える影響が小さいが、安定供給が見込めないと認識されていた。発電コストについては、他の発電方式(再生可能エネルギー、火力、原子力)の中で、「安い」と認識される割合が最も多く、過半数以上の人(59.3%)が安いと回答した。
太陽光発電については、他の再生可能エネルギーと同様に、環境(二酸化炭素排出を含む)や人の健康に与える影響が小さいが、安定供給が見込めないと認識されていた。発電コストについては、全ての発電方式の中で、「高い」と回答する割合が最も多かった(86.3%)。太陽光発電は、実際に家庭で設置を検討する機会があったり、あるいは、そのような広告を見る機会があったりと、他の発電方式と比較して、価格に触れる機会の多いことも影響している可能性があるのではないかと思われる。
風力発電については、小規模水力発電、太陽光発電、地熱発電に比べ、環境や人の健康への影響が大きいというネガティブな回答割合がやや高く(環境:11.2%、健康:17.9%)、風力発電の野生動物への影響や低周波騒音の問題についても公衆の認知度が高くなってきている可能性がうかがわれた。
地熱発電については、再生可能エネルギーのうち、大規模水力発電に次いで安定供給が期待できるという回答割合が高かったが、44.4%に留まった。地熱発電はその供給の安定性から、現在でもベース供給力の一部として活用されていることを考慮すると、公衆の安定供給に関する認知度は低いといえる。
大規模水力発電(図11)については、「環境へ与える影響が大きい」が68.0%となっており、他の再生可能エネルギーよりも、環境影響が大きいと認識されていた。一方、「発電コストが安い」は37.4%で、小規模水力に次いで発電コストが安いと認識されていた。
最後に、発電コストに関する発電方式ごとの比較結果を示す(図12)。「発電コストが高い」という回答割合は、太陽光発電(86.3%)、石油・石炭火力発電(82.1%)、風力発電(75.1%)、天然ガス(LNG)火力発電(74.2%)の順となっていた。これは、太陽光発電、風力発電に関しては、以前より資源エネルギー庁発行のエネルギー白書(2008年)等で、発電コストが高いことが指摘されており、それを反映しているものと考えられる。火力発電に関して、同じくエネルギー白書(2008)などで、火力発電は再生可能エネルギーに比べるとコストは低いという試算結果が示されているにも関わらず、コスト高であると認識されていたのは、福島第一原子力発電所事故後、原子力発電の代替として火力発電を増強した際の報道で、燃料費の高騰による電力料金の値上げについて数多く報じられたことも要因になっているのではないかと推測される。また、水力発電では、小規模水力発電(59.3%)が大規模水力発電(44.4%)よりもコストが低いという回答割合が高くなっていた。これは、「大規模」「小規模」という言葉そのもののイメージによるバイアスがかかっている可能性が考えられる。

図 2 発電方式別イメージ:日本の主要な電力源とすべき発電方式である

図 3 発電方式別イメージ:この発電方式を知らない

図 4 石油・石炭火力発電のイメージ

図 5 天然ガス(LNG)火力発電のイメージ

図 6 原子力発電のイメージ

図 7 小規模水力発電のイメージ

図 8 太陽光発電のイメージ

図 9 風力発電のイメージ

図 10 地熱発電のイメージ

図 11 大規模水力発電のイメージ

図 12 発電方式別イメージ:発電コスト
3. 発電方式の選択:約半数が自分で選択して購入を希望
ドイツでは、電力を供給する事業者が多数存在し、発電方式を選んで購入することができる。このように、自分で消費する電力を選んで購入したいかという問いに、46.4%が「発電方式を自分の考えで選択したい」、46.3%が「料金が安ければ発電方式にはこだわらない」、7.3%が「発電方式を選択したくない」と回答した(図13)。
次に、上記のうち「発電方式を自分の考えで選択したい」と回答した人を対象に、発電方式のイメージの質問と同じ11項目の発電方式を提示し、選択したいものを上位5つまで回答してもらった(1番目のみ必須回答)。
さらに、コスト情報が選択にどのような影響を与えるかを調べるため、発電方式別の発電コスト試算(表1)を提示した上で、同様に11の発電方式から選択したいものを上位5つまで回答してもらった。
発電コスト情報提示前後の比較結果を図14に示す。なお、図14は、1番目を5点、2番目を4点、3番目を3点、4番目を2点、5番目を1点として重み付けして集計した結果である。
発電コスト情報を提示前の段階では、太陽光発電(1692点)、風力発電(996点)、大規模水力発電(868点)、地熱発電(862点)、小規模水力発電(577点)の順に選択されていた。
ところが、発電方式別の発電コスト試算を提示した後は、大規模水力発電(1266点)、地熱発電(1109点)、小規模水力発電(1009点)、風力発電(832点)と順位が変わっており、発電コスト試算の提示前に最も点の高かった太陽光発電は644点と、5番目に順位を落とした。
発電コストが高めの太陽光発電、風力発電、バイオマス発電は点数を落とした一方で、発電コストが低めの大規模水力、各種火力発電は点数が増加した。一方、原子力発電はほとんど変動が無かった。
以上から、自分で消費する電力を選択できるのであれば、環境(二酸化炭素の排出を含む)や人の健康に与える影響が小さいと考えられている再生可能エネルギー(特に太陽光)を選択したいという消費者が多いが、実際に購入することを念頭においてコストを提示されると、コスト高である太陽光発電は敬遠され、環境への影響についてやや懸念されている(発電方式のイメージで68%が環境に与える影響が大きいと回答した)大規模水力を選択する人が増えた。また、順位は低いものの、石炭火力発電から購入したいと回答した人の割合もコスト提示前と比較して倍以上に増えていた。購入と言う観点では、環境の観点よりも「価格」という要素が大きく作用する可能性のあることがうかがわれた。
なお、今回提示した発電コストの試算結果については、様々な報告から集めて提示したものであり、発電方式ごとに試算の考え方が違っている可能性もある。また、再生可能エネルギーに関しては、最近、公表されている値より、若干保守的な値が提示されており、回答者の想定していた以上に高かった可能性もある。このため、購入選択の順位については、他の試算値を提示した場合には変わる可能性がある。

図 13 発電方式別電力選択の希望の有無
表 1 発電方式別の発電コスト試算

参考:
※1 資源エネルギー庁 「エネルギー白書(2008年度版)」
※2 (財)地球環境産業技術研究機構 「発電コストの推計」(2011年5月)
※3 経済産業省 地熱発電に関する研究会 (2009年6月)
注:
水力発電については参考資料である「エネルギー白書」には「水力発電」としか表記されていなかったが、アンケート実施後に確認したところ、大規模水力発電(ダム式)の試算値であることがわかった。
バイオマス発電に関しては、適切なデータを入手できなかったため、発電コスト試算値を表に掲載しなかった。

図 14 発電方式別電力選択の希望者が選択したい発電方式
電力に関するアンケート 第2報は、「電力の品質低下について」を予定しています。
本調査に関するお問い合わせは、下記担当者までお願いします。
日本エヌ・ユー・エス株式会社 環境リスクユニット
鈴木・桑垣・平杉