2025.10
サービス
河川浮遊プラスチック輸送を定量化する新ソフトウェアを開発しました

【概要】
 当社と、国立大学法人愛媛大学(愛媛大学大学院理工学研究科の片岡智哉准教授)、八千代エンジニヤリング株式会社、オランダ・ワーゲニンゲン大学(オランダ、Tim van Emmerik 准教授)は、深層学習を活用した画像解析AIにより、河川を流れるプラスチックを検出・分類・追跡するソフトウェアを開発しました。
 これまでの河川調査は目視観測に頼っており、多大な労力を要するうえ、洪水時には危険を伴うため継続的な調査が困難でした。本研究で開発したソフトウェアは、動画映像から自動的にプラスチックを分類・追跡し、輸送量を算定することを可能にしました。
 これにより、陸域から海域へと流出するプラスチックの実態把握に大きく貢献し、今後の環境政策の検討や対策の効果検証に資することが期待されます。本研究成果は、国際学術誌Water Researchに掲載されました。
   

【ポイント】

  • 河川水面を撮影した動画から、流下するプラスチックを自動検出・分類・追跡するソフトウェアを開発。
  • 飲料ボトル、レジ袋、食品容器、その他プラスチックの4種類を識別可能。
  • 河川の流速と各プラスチックの輸送量を同時に算定。
  • 洪水時を含む多様な条件下で、安全かつ継続的なモニタリングを実現し、海洋プラスチック問題の解決や政策立案に貢献。


【背景と成果】
 世界的に深刻化する海洋プラスチック汚染の解決には、陸から海へ流出するプラスチックの実態を把握することが不可欠です。特に河川は主要な流出経路であり、2019年のG20大阪サミットで宣言された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」(2025年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する)の実現に向けても、河川での正確なモニタリング技術が求められています。
 今回開発したソフトウェアは、
 ・ テンプレートマッチング技術1による河川流速の計測
 ・ YOLOv82によるプラスチック検出・分類
 ・ Deep SORT3による追跡技術
を統合することで、河川浮遊プラスチック輸送量を自動で算定します。
 これにより、従来は限られた地点・短期間にしか行えなかった観測が、複数の地点で同時に、洪水を含む多様な流況下でも継続的に実施可能になりました。さらに、対象となるプラスチックを種類別に分けて評価できるため、発生源対策やごみ削減施策の効果をより直接的に検証できる点が大きな特徴です。

図:開発したソフトウェアの解析の流れ

 
 今後は、河川プラスチックモニタリングシステム「PRIMOS」4に本ソフトウェアを搭載し、実河川での社会実装を進めていきます。この取り組みにより、
 ・ 陸から海へのプラスチック流出量の精緻な推定
 ・ 流域圏全体における輸送過程の解明
 ・ 科学的根拠に基づく政策立案・評価
が可能になり、持続可能な社会に向けた国際的な取り組みに大きく寄与することが期待されます。

  1. 画像内からあらかじめ用意した部分画像(テンプレート)と一致する領域を探索する画像認識手法
  2. 物体検出アルゴリズム「You Only Look Once」シリーズの第8版で,高速かつ高精度に対象物を検出・分類できる深層学習モデル
  3. 物体追跡アルゴリズム「SORT(Simple Online and Realtime Tracking)」を拡張し,深層学習による外観特徴量を用いることで,同一物体の識別精度を向上させた手法
  4. 八千代エンジニヤリング株式会社と愛媛大学で共同開発した河川浮遊プラスチックのモニタリングシステム(Plastic Runoff Identification, Monitoring & Observation System)の製品名称
    八千代エンジニヤリング株式会社HP(2025年4月14日): https://www.yachiyo-eng.co.jp/news/2025/04/post_892.html
    愛媛大学HP(2025年4月14日): https://www.ehime-u.ac.jp/data_relese/pr_20250414_eng/



【論文情報】
掲載誌:Water Research
題名:RiSIM: River Surface Image Monitoring Software for Quantifying Floating Macroplastic Transport
(和訳)河川浮遊プラスチック輸送を定量するための画像解析ソフトウェア
著者:Tomoya Kataoka, Takushi Yoshida, Kenji Sasaki, Yoshinori Kosuge, Yoshihiro Suzuki, Tim H.M. van Emmerik
DOI:10.1016/j.watres.2025.124678
URL:https://doi.org/10.1016/j.watres.2025.124678
  

【研究サポート】
環境総合推進費(JPMEERF21S11900、JPMEERF20231004)、ムーンショット型研究開発事業(JPNP18016)、科研費基盤B(24K00992)、環境省実証事業「令和6年度海洋ごみの実態把握及び効率的な回収に関する総合検討業務」
  

【問い合わせ先】
(報道に関する問い合わせ先)
 日本エヌ・ユー・エス株式会社 営業企画室
 TEL:03-5925-6710

    E-mail: janus-mk@janus.co.jp

 

 愛媛大学 総務部広報課
 TEL:089-927-9022

    E-mail: koho@stu.ehime-u.ac.jp

 

 八千代エンジニヤリング株式会社
 川ごみモニタリングシステム開発係

    E-mail: yec-river-monitoring@yachiyo-eng.co.jp



(研究に関する問い合わせ先)
 愛媛大学大学院理工学研究科理工学専攻 准教授 片岡 智哉
 電話:089-927-9817

    E-mail: kataoka.tomoya.ab@ehime-u.ac.jp

2025.10
サービス
新着受託情報のご案内

・海洋教育を効果的・効率的に実施するための情報の収集・整理

以上を受託致しました。

2025.09
サービス
新着受託情報のご案内

・令和7年度放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の遺伝性(的)影響に関する解説資料制作事業)委託業務

・危険物施設おける火災事故及び流出事故の調査分析業務

・令和7年度微小粒子状物質健康影響等に係る調査・検討業務

・令和7年度気候変動適応地域づくり推進事業東北地域業務

以上を受託致しました。

2025.08
サービス
新着受託情報のご案内

・令和6年度補正廃炉・汚染水・処理水対策事業(海外における廃炉への取組事例に関する情報収集・調査・分析等)

・令和7年度環境中医薬品等(PPCPs)に係る生態影響把握等検討業務

以上を受託致しました。

2025.07
サービス
新着受託情報のご案内

・令和7年度化学物質複合影響評価手法検討調査業務

・令和7年度中間貯蔵施設事業に係る環境影響評価業務

・令和7年度気候変動適応地域づくり推進事業北海道地域業務

以上を受託致しました。

2025.06
サービス
新着受託情報のご案内

・令和7年度PFASに関する総合情報収集・検討会等支援等業務
・令和7年度関東ブロックにおける大規模災害時災害廃棄物処理の対応能力等強化促進業務
・令和7年度国内黄砂飛来状況解析業務
・令和7年度原子力の利用状況等に関する調査(国内外における原子力政策・産業動向調査等)

以上を受託致しました。

2025.05
サービス
新着受託情報のご案内

・令和7年度大熊町特定帰還居住区域等同意取得支援等業務

・令和7年度海洋環境モニタリング調査総合解析業務

・令和7年度化学物質の内分泌かく乱作用に関する総合的調査・研究業務

・令和7年度POPs条約対応総合対策検討業務

・令和7年度原子力利用状況等調査事業(海外における原子力イノベーションの動向調査)

以上を受託致しました。

2025.04
サービス
「尾鷲ネイチャーポジティブコンソーシアム」に参画しました

 当社は、尾鷲市、株式会社Paramita、一般社団法人Local Coop尾鷲が事務局を務める「尾鷲ネイチャーポジティブコンソーシアム」に、パートナー企業として参画いたしました。

尾鷲市みんなの森からの景色

 本コンソーシアムは、「地域と地球の生態系に資するゆたかな自然」、「ゆたかな自然と人が共生する地域」及び「一次産業の担い手と移住者の増加」を軸とした尾鷲市ゼロカーボンシティ宣言並びにネイチャーポジティブ宣言における22世紀のサステナブルシティを目指し、設立されました。今後は、以下の3つのアクションを軸に活動を実施していきます。

  1. 自然環境整備:尾鷲市全域の森林ゾーニングと生物多様性の指標づくりといった基盤整備に加え、森林整備や藻場再生を推進します。
  2. 環境負荷低減:環境負荷を低減するための再エネ・省エネの促進の他、人と自然が共生するまちづくりのためのガイドラインづくり等を推進します。
  3. 教育:新しい一次産業の担い手向けの教育プログラムの設立の他、気候変動を生き延びるための学び場の創立を目指していきます。

 当社では、エネルギー、環境、社会科学の分野で培ってきた高度なコンサルティング能力を本コンソーシアムの取組でも活かし、尾鷲市の生物多様性の回復と経済価値創出を両立させた22世紀につなぐ地域づくりをサポートしていきます。

関連ページ
尾鷲ネイチャーポジティブアクション会議
事務局プレスリリース

2025.03
サービス
新着受託情報のご案内

・令和6年度地産地消型資源循環加速化支援等業務
・令和7年度海洋ごみの実態把握及び効率的な回収に関する総合検討業務
・令和7年度放射線健康管理・健康不安対策事業(福島県外における放射線に係る健康影響等に関するリスクコミュニケーション事業)委託業務
・令和7年度放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)委託業務
・令和7年度気候変動適応地域づくり推進事業全国業務
・令和7年度電離放射線障害に関する医学的知見の収集に係る調査研究
・令和7年度PFASに係る総合研究の推進及びリスク評価検討委託業務
・令和7年度一般環境中の放射性物質に関する取組状況等に係る調査等業務
・令和7年度東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査業務
・令和7年度海洋汚染防止条約等に係る国際動向調査及び対応支援業務
・令和7年度気候変動影響評価等に関する調査・検討等業務
・令和7年度ジフェニルアルシン酸等の健康影響に関する調査研究委託業務

以上を受託致しました。

2025.03
サービス
「沖縄ブルーカーボンプロジェクト」における産学連携推進に関する覚書を締結しました

 日本エヌ・ユー・エス株式会社、株式会社りゅうせき(以下、りゅうせき)、国立大学法人琉球大学(以下、琉大)、沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)は、「沖縄ブルーカーボンプロジェクト」における産学連携推進のため、以下の協力事項を含む4者間の覚書を締結いたしました。

協力事項
・沖縄全域のブルーカーボン生態系を研究するためのプラットフォームの構築
・沖縄の企業及び環境関連事業者のためのプラットフォームの構築
・環境保全啓発活動及び教育活動の推進


 ブルーカーボンとは、藻場、湿地・干潟、マングローブ林などの海洋生態系に蓄積される炭素を指し、そのような蓄積作用を有する生態系をブルーカーボン生態系と言います。

 ブルーカーボンは、2009年に国連環境計画(UNEP)によりCO2吸収源としての海の可能性が示され、近年注目が高まっています。
 わが国では、2023年提出のGHGインベントリ(国連に提出する排出・吸収量報告)においてブルーカーボンのCO2吸収量が初めて計上され、中長期的な目標として、ブルーカーボンによるCO2吸収量を2035年度に100万トン、2040年度に200万トンへ拡大することが掲げられています。
 また、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)により、ブルーカーボンを対象とする「Jブルークレジット」の認証・発行・管理が行われています。

 沖縄は豊かな自然を有する地域であり、世界的にも生物多様性の高い貴重な地域と言われています。ブルーカーボン生態系の回復・創出は、CO2吸収源の拡大によるカーボンニュートラルの実現に寄与するだけでなく、海洋生態系の保全により、2030年に向けて自然の損失を食い止め反転させるネイチャーポジティブの実現にも寄与するものです。

 加えて、ブルーカーボン事業には多岐にわたるステークホルダーが関与することから、各主体に対する様々な付加価値を創出することができます。

ブルーカーボン生態系のコベネフィット

引用元:国土交通省港湾局「海の森ブルーカーボン -CO2の新たな吸収源-」
https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001742416.pdf


 当社は、エネルギー、環境、社会科学の分野で培ってきた高度なコンサルティング能力を活かし、持続可能な社会、豊かで安心できる未来社会の構築に貢献することを目指し、本プロジェクトに関連する以下のような取り組みを進めてまいりました。
・クレジットの創出・活用を含む自治体や企業の脱炭素の取り組みの支援
・藻場のモニタリングや造成を含む海洋環境の保全
・水産資源管理や海業の振興等による漁業者の支援
・気候変動適応や海洋ごみ等の課題における関係者間の連携構築、普及啓発及び教育活動

 
 当社はこのような知見や経験を活かし、りゅうせき、琉大、OISTと協力して、本プロジェクトに取り組んでまいります。

2025.03
サービス
新着受託情報のご案内

・令和7年度有害大気汚染物質に関する健康リスク評価調査等委託業務
・令和7年度海洋環境保全に係る国際動向への対応調査検討業務

以上を受託致しました。

2025.02
サービス
取り組み紹介 自然共生サイト・OECM認定取得支援 地域生物多様性増進法による認定

 当社では、令和4年度より自然共生サイト、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)の認定取得支援を実施しています。

 自然共生サイトの認定は、令和7年度以降、「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(令和6年法律第18号 地域生物多様性増進法)」に基づく「増進活動実施計画」又は「連携増進活動実施計画」※として認定されることとなりました。
 大きな変更点としては、認定対象が区域(民間の取組によって生物多様性の保全が図られている区域)から計画(特定の場所に紐付いた民間等による生物多様性を増進する活動実施計画)に変更されるほか、現状で生物多様性が豊かな場所でなくとも生物多様性を回復・創出する活動についても認定されること、認定者が主務大臣(環境大臣・農林水産大臣・国土交通大臣)となること等が挙げられます。

 これに先立ち、当社は環境省より、申請者が利用するための地域生物多様性増進活動の手引きに関する資料を作成する「令和6年度生態系タイプに応じた生物多様性の増進する活動のあり方検討業務」を受託し、業務を実施いたしました。本業務のなかで関連資料を作成した「地域生物多様性増進活動の手引き」は、環境省の自然共生サイトのウェブサイトにて公開されています。詳細は、環境省の自然共生サイトのウェブサイトをご覧ください。
環境省「 30by30 自然共生サイト」ウェブサイト

 当社では、地域生物多様性増進法の手引きの作成に係る実績を活かして、これまでの自然共生サイトの認定取得支援に引き続き、「地域生物多様性増進法」に基づく認定取得についても支援を提供していきます。
 また、既に認定された自然共生サイトの活用や普及啓発、登録に向けた候補場所の選定や評価等についてもお気軽にご相談ください。

30by30アライアンスロゴマーク

当社が実施する認定取得支援のイメージ:

※ 増進活動実施計画:企業等が作成する、里地里山の保全、外来生物の防除、希少種の保護といった
  生物多様性の維持・回復・創出に資する計画
  連携増進活動実施計画:市町村等がとりまとめ役として地域の多様な主体と連携して行う活動の計
  画

問い合わせ先:

お問い合わせ – エネルギーと環境を考える 日本エヌ・ユー・エス株式会社(JANUS)