Environment
環境

大気拡散シミュレーション

背景と課題

 人体や環境に影響を及ぼす汚染物質・危険物を扱う特定プラント(例えば、発電所、化学兵器等の爆発物処理所など)の設置許可申請時等における環境影響評価や、光化学スモッグ・PM2.5に代表される大気汚染問題の現況把握やその改善対策効果の定量的評価には、物質の大気中での挙動を適切にシミュレートする大気拡散(大気環境)モデルの利用が必要・不可欠です。

サービス/技術

 人体や環境に影響を及ぼす汚染物質の種類は多岐にわたり、物質毎に大気中での挙動(発生・移流・拡散・降下・反応及び崩壊による生成・除去等)は大きく異なるため、全ての汚染物質を取り扱うことは非常に困難ですが、JANUSでは、独自に開発したモデルだけでなく、国内外の大学・研究機関で開発されたモデルも含め、多くの大気拡散(大気環境)モデル(たとえば、MERCURE、CMAQ)を目的に応じて選定し利用することで、様々な物質のシミュレーションを可能にし、その拡散解析・影響評価を実施してきました。
 大気拡散(大気環境)シミュレーションの実施には、気象情報が必要・不可欠です。多くの場合、各国の行政機関が提供している気象(観測)データ等が利用されますが、JANUSでは、独自に天気予報等で利用される気象モデル(たとえば、WRF)を用いた気象シミュレーションを実施することで、気象データを作成し、大気拡散(大気環境)シミュレーションを実施しています。気象モデルの利用により、過去から現在、現在から将来の地球上のあらゆる地域における高精度な気象データの作成や大気拡散(大気環境)シミュレーションが可能となります。
 JANUSでは、個々の事例における汚染物質の拡散解析・影響評価等のサービスをご提供するだけでなく、一連の作業(ソースタームの設定、気象データの処理または作成、ソース形態に応じた移流拡散の計算、解析・評価結果の地理情報(GIS)システム上での表示)を処理する評価システムのご提供も行っており、様々な形でお客様の大気汚染対策をサポートします。

解析事例1:気象及び放出粒子拡散シミュレーション

 気象が短時間で劇的に変化する地域において、プラント等から排出された微粒子(たとえば、PM2.5等)による大気汚染状況を把握・検討するために、気象の変化を考慮した3次元の粒子状物質拡散解析を実施。

風速(>7.5m/s)の変化の様子
気象シミュレーション:風速

雨雲の変化の様子
気象シミュレーション:雨雲

気象シミュレーション出力例
(気象モデルWRFの出力結果を国立研究開発法人海洋研究開発機構のVDVGEを利用して描画)

粒子拡散シミュレーション

気象シミュレーションの出力を利用した3次元粒子拡散解析

解析事例2:自動車排ガスの沿道大気拡散シミュレーション

 交通が集中している道路周辺や市街地における自動車の排ガス(たとえば、窒素酸化物やPM2.5等の微小粒子)による大気汚染状況を把握・検討するために、建物・道路構造物等の複雑形状による流れの変化も考慮したうえで、沿道大気を対象にした3次元の拡散解析を実施。

市街地における排ガスシミュレーション


市街地における自動車排ガスシミュレーション
(MERCUREコードを利用)

 なお、これらのシミュレーションは危険有害物質漏えい時の避難や防災計画の立案という観点から、安全・防災、化学工業分野においてもご利用頂いています。

解析事例3:工場排煙の拡散解析

 山間部に建設された工場や発電所等からの排煙による環境影響評価を目的として、各種気象条件下で地形及び建屋の影響を考慮した3次元拡散解析を実施。

山間部プラント排煙シミュレーション

山間部に立地するプラントからの排煙シミュレーション
(MERCUREコードを利用)

解析事例4:東アジア域及びわが国における大気汚染物質高濃度事例シミュレーション

 東アジア域やわが国において発生した光化学オキシダントやPM2.5による大気汚染の発生メカニズムの解明を目的に、大気環境モデルを用いたシミュレーションを実施。

光化学オキシダント

光化学オキシダントのシミュレーション(CMAQモデルを利用)


PM25

PM2.5 濃度のシミュレーション(CMAQモデルを利用)

その他の解析事例/業務実績

  • プラント内における噴出ガス拡散解析業務
  • 市街地に隣接する工場排煙の単純な大気拡散モデル(プルーム・パフモデル)による排煙拡散解析業務
  • 地熱発電所周辺(急峻な山間部)の風況再現及び排出ガス予測モデルの開発及び拡散解析業務
  • 東アジア域及び、日本国内域における光化学オキシダント及びPM2.5濃度への排出源寄与解析業務
  • 北極域における黒色炭素粒子の拡散解析及びその気候影響評価業務
  • わが国に飛来した大規模黄砂現象の輸送解析業務
  • 大気環境モデルを用いた大気汚染メカニズム解析・影響評価システム構築業務
  • 大気拡散・大気環境モデル研修ワークショップサポート業務

用語説明

●WRF(Weather Research and Forecasting):
米国大気研究センター(NCEP)/米国海洋大気庁予報システム研究所(NOAA)が中心となって開発・改良を行っている3次元メソスケール気象モデル。

●MERCUE:
地形や建屋等の影響を考慮しなければならないローカルスケール(100m〜数十Km)における汚染物質の拡散評価を目的として開発された非定常計算流体力学(CFD)コード

●CMAQ (Community Multi-scale Air Quality):
米国環境保護局(U.S. EPA)が中心となって開発・改良を行っている大気質モデル(大気環境モデル)

関連するリンク先

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