背景と課題
海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみなど)は、世界中の海や海岸へ拡がっており、地球規模の環境問題として近年、世界的に高い注目を集めています。
海洋ごみの種類は多様で、ビニール片、ペットボトル、漁具などのプラスチック類や発泡スチロール類が主体となっている他、飲料缶、電球・蛍光灯、重油、ガラス類、注射器やバイアルなどの医療系廃棄物、流木・木材などがあげられます。
これら海洋ごみは、海岸の景観を害するだけでなく、ガラス類や注射器などは人々の海岸利用において怪我や感染症などのリスクを高めます。また、近年はマイクロプラスチックと呼ばれる大きさが5mm以下の劣化分解したプラスチックやレジンペレットなどが海洋生物の体内に取込まれていることがわかり、それらに含まれる残留性有機汚染物質・重金属などの有害物質の影響が懸念されるなど、新たな問題も明らかになってきています。
また、米ジョージア大学の試算(米サイエンス誌、2015年2月13日)によれば、海洋に流出するプラスチックごみは、世界全体で年間480万〜1270万トンに達するとされ、今後も増え続ける見込みです。
国内においては、20〜30年程前から海岸の漂着ごみ問題が顕在化し、地方行政機関や民間団体などにより清掃活動が行われるようになりました。その後、国レベルの対策検討が始まり、2009年には「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(海岸漂着物処理推進法)」が公布・施行され、現在は同法に基づき海洋ごみ対策が進められています。
これらの対策は一定の成果を見せつつあるものの、現在も海洋ごみの発生は止まっておらず、問題は解決していないばかりか、先にも触れたとおり最近では海洋ごみに含まれる有害物質や世界規模で海洋に拡がるマイクロプラスチックなど、海洋ごみの問題は多様化しています。
海岸を覆う漂着ごみ(沖縄県・西表島)
海岸に漂着したレジンペレット(沖縄県・黒島)
サービス/技術
JANUSでは、2006年(平成18年)以来、海洋ごみに関わる様々なコンサルティングを提供しています。
実態把握のための調査・検討
海洋ごみ対策を実施する上では、その発生状況に関わる情報が不可欠です。JANUSでは、様々な技術と手法を活かし海洋ごみの発生量や経路などの把握に取組んでいます。主な取組は以下のとおりです。
- 漂流・漂着・海底ごみなどの現地踏査やモニタリング調査を通じた発生量・質(種類)・発生源などの調査検討
- 全国各地で実施された回収活動実績の分析による発生量や回収量の推計
- 漂流シミュレーションや発信器付標識放流による漂流経路の調査検討
漂着ごみのモニタリング調査(沖縄県発注業務※1)
伊勢湾における河口部からの漂流経路のシミュレーション結果(環境省発注業務※1)
対策検討業務
JANUSでは、海洋ごみ問題に対する様々な対策検討に取組んでいます。主な取組は以下のとおりです。
- 海岸漂着物処理推進法に基づき、全国の自治体が自ら制定する海岸漂着物対策地域計画の策定支援
- 漂着ごみの回収処理マニュアル作成(事業者用、ボランティア用など)
- 効果的な回収及び処理手法の検討
- 再資源化に関わる調査検討
- 海洋ごみに含まれる有害物質に係る調査及び対策検討
- 効果的な回収処理のための地域関係者の協力体制づくり
小型焼却炉による漂着ごみの燃焼試験(沖縄県発注業務※3)
地域関係者の協力体制のための協議(沖縄県発注業務※4)
発生抑制のための環境教育・普及啓発
海洋ごみ問題を解決するには、効果的な回収処理のみならず、発生源対策が重要となります。発生源対策には、自然環境への直接的なごみの排出抑制と、海洋ごみの問題を周知・共有し幅広い年齢層の意識向上を図る環境教育・普及啓発があげられます。
JANUSでは、これまで培ってきた海洋ごみ対策に関わる専門的知識と経験を活かし、様々な環境教育・普及啓発に取組んでいます。主な取組みは以下のとおりです。
- 環境教育・普及啓発教材の作成とその活用方法の検討
- 子供から大人まで幅広い年齢層を対象とした環境教育
- 海洋ごみ対策のためのワークショップの開催、対策を担う人材育成
- 海外との連携を目的とした交流事業
小中学生への海洋ごみ問題の環境教育(沖縄県粟国村発注業務※5)
沖縄県と台湾の海洋ごみ発生抑制のための交流事業によるワークショップ(沖縄県発注業務※6)
新たな課題への対応
近年、世界中の水環境に拡がるマイクロプラスチックや、海洋ごみに含まれる有害物質の影響などの新たな海洋ごみ問題が顕在化しています。
JANUSでは、これらの課題に対し、国内外を対象とした幅広い情報収集に加え、関係する研究者・研究機関との連携強化を進めています。例えば有害物質の課題については生物生態系や自然環境への影響検討に早期に着手するなど、迅速に対応しています。
業務実績/サービス例
- 環境省 平成22・23・24年度漂着ごみ状況把握調査
- 環境省 平成24年度漂流・漂着・海底ごみ原因究明分析調査業務
- 環境省 平成24・25年度漂流・海底ごみ実態把握調査委託業務
- 環境省 平成25・26年度漂着ごみ対策総合検討業務
- 沖縄県 平成21・22・23・24年度沖縄県海岸漂着物対策事業
- 沖縄県 平成25・26年度沖縄県海岸漂着物地域対策推進事業
- 沖縄県各町村 平成24年度竹富町・多良間村海岸漂着物対策事業
- 沖縄県各町村 平成26年度多良間村・久米島町・座間味村・粟国村・伊江村海岸漂着物対策事業
- 富山県 平成21・22年度富山県海岸漂着物対策推進地域計画策定等業務
- 富山県 平成23年度富山県海岸漂着物対策推進協議会開催等業務
- 三重県 平成22〜23年度三重県海岸漂着物処理推進地域計画策定支援委託業務
- 和歌山県 平成22年度和歌山県海岸漂着ゴミ等実態調査業務
- 和歌山県 平成23年度和歌山県海岸漂着物処理推進地域計画策定支援業務
- 長崎県 平成26年度長崎県海岸清掃マニュアル作成業務
- 対馬市 平成25・26年度対馬市海岸漂着物地域対策推進事業業務委託
参考文献
※1平成25年度沖縄県海岸漂着物地域対策推進事業
※2環境省第2期漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査総括検討会報告書
(我が国から海外へ流出するゴミの実態把握手法検討調査)
https://www.env.go.jp/earth/report/h23-04/chpt1-5-9.pdf
※3平成24年度沖縄県海岸漂着物対策事業
※4平成22年度沖縄県海岸漂着物対策事業
※5平成26年度粟国村海岸漂着物対策事業
※6平成26年度沖縄県海岸漂着物地域対策推進事業