背景と課題
アスベストは、かつて優れた耐熱性・耐火性・耐久性を有する建材として広く利用されてきましたが、粉塵を吸い込むことで健康被害を引き起こすため、現在では使用が禁止されています。一方で、過去にアスベストを使用した建物は今なお数多く残っており、解体・除去工事に伴うアスベスト飛散リスクは、依然として社会的な問題となっています。特に、アスベスト含有建築物の解体は2030年頃にピークを迎えると予測されており、解体現場における漏洩防止を目的としたモニタリング件数は今後さらに増加する見込みです。
環境省「アスベストモニタリングマニュアル」では、解体現場周辺で採取した粉塵をフィルターに捕集し、位相差顕微鏡を用いて繊維状物質を目視で計数することで、アスベストの飛散有無を確認する方法が示されています。しかし、この分析には1枚のフィルター当たりあたり25~100分程度を要すると言われており、分析者の集中力や経験に依存しやすいことから、作業負担や判定のばらつきが問題となっています。
サービス/技術

メコラス®は、解体現場で採取した粉塵の位相差顕微鏡(PCM)画像をAIで解析し、アスベスト飛散の有無を効率的かつ高精度に確認するための支援システムです。
粉塵画像のAI診断により、従来、分析者が行ってきた繊維検出・計数作業を補完し、モニタリング業務の省力化と判定精度の向上を同時に実現します。
※メコラス®は、当社と国立研究開発法人国立環境研究所及び株式会社環境管理センターとの共同研究により開発されました。アスベスト計数へのAI活用が国際的に検討されつつある中、実環境試料を用いて精度検証が行われた国内初の製品です。
主な特長
- 熟練分析者の判断を再現するAIモデル
熟練分析者の計数結果を教師データとして学習したAIを搭載し、実環境試料に対しても高い汎用性を示します。- 繊維検出:再現率 0.95
- 繊維計数:再現率 0.71
(5分析機関の分析結果との比較による検証結果)
- 実用的な分析時間
1画像あたりの処理時間は約1秒で、熟練分析者と同等の分析時間を実現。漏洩の早期発見や是正判断を支援します。 - 現場を意識したユーザーインタフェース
- AIが検出した繊維状物質をマーカー表示し、視認性を向上
- 複数画像の一括処理に対応
- 画像別・繊維別の結果一覧表示
- CSV出力や画像出力(着色状態含む)に対応
- 現行マニュアルに基づいた判定
環境省「アスベストモニタリングマニュアル」に基づき、繊維長・繊維幅・アスペクト比の基準を満たす繊維状物質のみを自動判定し、既存の測定フローに無理なく組み込めます。
活用シーン
- 解体・除去工事現場におけるアスベスト漏洩監視
- 分析業務の省力化・効率化
- 熟練分析者の作業負担軽減
- 教育・人材育成の補助ツール
メコラス®は、分析者を代替するものではなく、分析者を支援するツールとして設計されています。
今後の展開
- 2026年夏頃
静止画像(PCM画像)を対象としたメコラス®を正式上市予定 - 2027年度
リアルタイム検出に対応した次世代版の市場投入を計画
将来的には、走査型電子顕微鏡(SEM)画像や偏光顕微鏡画像への応用、既存の自動撮影ソフトウェアとの連携など、現場ニーズに応じた展開を検討しています。
参考文献
- Yamamoto, T., Iwasaki, K., Iida, Y., Yuki, K., Nakaji, F., Yamashiro, H., Toyoguchi, T. and Terazono, A. Rapid fiber-detection technique by artificial intelligence in phase-contrast microscope images of simulated atmospheric samples. Ann. Work Expos. Health (2024) 68, 420-426.
- Iida, Y., Yamamoto, T., Iwasaki, K., Yuki, K.-I., Kiri, K., Yamashiro, H., Toyoguchi, T. and Terazono, A. Development of a rapid fiber-detection system using artificial intelligence in phase-contrast microscope images of actual atmospheric samples. Front. Anal. Sci. (25 June 2025).




