背景と課題
原子力発電所において放射性物質の大気環境中への放出を伴う事故が万が一発生した場合、周辺への影響を迅速に予測評価することの重要性は、ここで改めて強調する必要がないほど高いものです。大気中に放出された放射性物質は、大気の状態に応じて拡散しつつ、風に乗って移流していきます。地表面に接した一部はその表面に沈着し、降水があれば空気中に存在する多くの放射性物質は地表面へ沈着します。地表面に沈着した量だけ空気中から放射性物質は減少します。これらはすべて、周辺への影響(被ばく線量)の大小にかかわってくるものです。すなわち、周辺への影響を迅速に予測評価するためには、風向や風速、大気安定度、降雨量といった気象条件を迅速に把握することが不可欠です。そのため、JANUSの緊急時環境影響評価システムでは、サイトで測定されている気象観測データをオンラインで定期的に受信して常に最新の情報を利用できるようになっているほか、気象庁の予測データであるGPVデータに基づいて気象モデルで評価した予測気象データも利用して、周辺線量の迅速な予測評価を行います。また、仮想的な気象条件を設定した線量評価を行うことも可能です。
もちろん、このシステムは、原子力発電所の緊急時訓練にも利用することができます。
サービス/技術
JANUSでは,原子力発電所の事故により放射性物質(放射性希ガス・よう素・粒子状物質)が大気環境中に放出されるおそれがある場合、または放出してしまった場合、サイト周辺被ばく影響のリアルタイム評価及び予測評価を行って、影響評価範囲を表示する緊急時環境影響評価システムを提供しています。
システム機能構成
- オンライン入力データ自動収集
- 事故判定、自動起動
- 3次元移流拡散被ばく影響評価
- 使用データ,評価表示
- 気象庁GPVデータに基づく予測気象データ作成
所要入力データ
- 排気筒ガスモニタデータ等のプラントデータ
- 発電所内気象データ
- 発電所外風向風速データ(オプション)
- 気象庁GPVデータ(オプション)
- 気象庁アメダスデータ(オプション)
- モニタリングポスト指示値
主な評価項目
- 空気中濃度[Bq/m3]
- 地表沈着量[Bq/m2]
- 空気吸収線量率(クラウド,グランド)[Gy/h]
- 外部被ばく実効線量[Sv]
- 内部被ばく実効線量[Sv]
- 人口積算線量[man・Sv]
出力形式
- 拡散物質分布(3次元鳥瞰図)
- 評価結果の等値線分布
- 任意地点の評価結果の経時変化
- 人口積算線量分布
- 被ばく防護対策範囲
緊急時環境影響評価システムの画面例
参考文献
鈴木政時,“3 次元大気拡散リアルタイム影響評価シミュレーション例”,化学工学会第62年会,T302, pp233-234,(1997)