背景と課題
発電所建設や資源開発等の大規模な開発事業において、事業者は、事業の必要性や採算性だけでなく、環境や地域社会に与える影響について十分に配慮し、事業計画を作成することが重要となります。
このような考え方から、開発と環境保全の両立を図り、持続可能な開発を進めていくために生まれた制度が、環境アセスメント(環境影響評価)です。具体的には、事業が環境に及ぼしうる影響について、開発事業の計画段階において事業者自らが調査、予測、評価を行います。その結果を公表し、一般の方々、地方公共団体等から寄せられた意見を踏まえ、環境保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていこうという制度です。
政府開発援助(ODA)や金融機関の融資等による海外での大規模開発事業においては、自然環境に対する影響だけでなく、非自発的住民移転や先住民族等の人権の尊重、人々の生活、地域社会等の社会環境に対する影響や気候変動に与える影響などについても配慮することが求められています。
サービス/技術
JANUSは、国内の環境アセスメント(環境影響評価)等の50年以上にわたる豊富な経験と実績を活かし、諸外国の環境社会影響評価(Environmental and Social Impact Assessment: ESIA)に取り組んでいます。調査・予測・評価だけでなく、現地国の法規制に準拠したESIA報告書の作成、環境・社会・経済的影響に係る行政との協議・住民説明会のサポート・慣習の違いへの対応も含めたマネジメントサービスにより、事業者の環境アセスメント手続きを支援します。
また、金融機関による環境審査や、円借款や民間事業の実現可能性を調査するフィージビリティスタディ(FS)、環境法規制調査等、お客様のご要望(期間・方法・コスト等)に柔軟に対応したサービスを提供しています。
現地の状況など、国内の調査で不十分な場合には、現地での実査や、当該国の政府機関・提携先/取引先・現地コンサルタントとの面談等を通じ、詳細に確認を行います。環境・社会面に関連する国際的な基準と現地国の基準とを比較しながら、自然環境や地域社会に対する悪影響をできる限り回避・緩和するための対策等も考慮したコンサルティングを行っています。
ESIA手続き
環境社会影響評価の項目は、大気・水・土壌などへの影響、生態系や野生生物への影響、住民移転による影響、生活生計・貧困層・先住民族・文化遺産・景観への影響、生活生計への影響など多岐にわたります。事業内容や地域特性から、影響の評価が必要と思われる項目を選定し、調査・予測・評価を行います。政府開発援助機関や金融機関による要求事項や現地国の法規制を踏まえ、適切なESIA手続きを実施します。また、ESIA手続き後のモニタリングや再評価についても、責任を持ってフォローアップします。
FS
FSでは、環境・社会面から事業の実現可能性について調査します。海外事業計画の素案の段階から、最終的な事業計画の修正・見直しまで、様々なフェーズで調査・評価を行い、事業者の事業組成をサポートします。専門家が海外現地を訪問し、現地国の文化や慣習を考慮しながら実現可能性の検討を行い、FS報告書を作成します。また、必要に応じて、現地国の法規制だけでなく、金融機関等による要求事項も考慮しながら、現地コンサルタントによるESIA報告書作成の支援も行います。
環境社会配慮確認
海外でのインフラ開発事業に対して金融機関が投融資や貿易保険の付保等を行う金融機関、また同様の開発事業においてプロジェクトファイナンスを受けようと検討・準備されている事業者の方に対し、国際金融公社(IFC)のパフォーマンススタンダード(PS)や世界銀行の環境社会フレームワーク(ESF)、赤道原則等の国際基準を踏まえた環境社会配慮確認のサポートを行っています。
金融機関に対しては、事業者が適切に環境社会配慮を実施しているか確認します。このような環境レビューでは、国際的な基準と現地国の基準を遵守し、悪影響の最小化・軽減措置が検討されているかを確認すると同時に、モニタリング計画や環境管理計画など事業者の体制や費用が十分に確保されているかを明確にし、投融資の意思決定に先立ち、環境・社会面のリスク要因を洗い出します。十分な配慮が行われていないと判断される場合は、事業者へ適切な環境社会配慮を行うよう働きかけるサポートを行います。
また、事業者の方に対しては、円滑に環境審査に対応いただけるよう、環境審査開始前の現地で環境影響評価を実施する段階から支援をいたします。基本的に現地では当該国の基準を遵守するように環境影響評価が実施されますが、金融機関からの環境審査に向けては国際基準の遵守も必要です。現地の環境影響評価手続きとは別に、金融機関向けの国際的な基準に沿った環境社会影響評価報告書、生物多様性保全計画、住民移転計画、ステークホルダー協議計画等の提出が要求されることもあるため、現地コンサルタントと協調し、これら文書の作成を支援いたします。
環境法規制調査
海外における環境アセスメント制度や環境法規制(大気・水質・騒音や環境関連許認可等)の調査を行っています。JANUSの提携先や取引実績のある環境コンサルティング会社と連携し、最新の法令文書の調査だけでなく、関連省庁へのヒアリング等を実施し、各国の法規制の枠組みから、法改正の最新動向や実際の施行にあたって留意すべき点まで、詳細に調査します。
業務実績/サービス例
JANUSには様々な国におけるFS、環境社会配慮確認、環境法規制調査の実績があります。各国における環境関連法規制の知見を蓄積しており、また一部の国においては現地コンサルタントとの協力体制を構築しています。