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エネルギー

第1回 | なぜ日本に、なぜ今、原子力なのか

安全で信頼性が高く革新的な原子力発電は、安価で安全かつクリーンな日本のエネルギーの未来への道筋となる

本稿は、分析に裏打ちされたリスク情報を活用したパフォーマンスベースの意思決定が、日本における原子力の安全性向上、既設炉の有効活用、将来の原子力導入にどのように役立つかを考察する全6回の連載の第1回です。本稿では、この問題の緊急性が高まっている理由を説明します。続く各回では、規制の近代化の原則、手法および実務への適用を取り上げます。

歴史を振り返ると、経済成長、技術の進歩、生活の質の向上は、豊富なエネルギーを利用できることと密接に結び付いてきました。

今日、この関係はさらに強まっています。人工知能(AI)、先進製造、電化、デジタルインフラ、生活水準の向上により、電力消費量はかつてない規模で増加しています。同時に、近年の地政学的な出来事を受け、世界各国の政府の間で、エネルギー政策は国家安全保障政策でもあるという認識が改めて強まっています。エネルギー供給の混乱が及ぼす影響は、電力価格にとどまりません。産業競争力、サプライチェーンの強靱性、経済成長、さらには戦略的自立性にも影響を及ぼします。将来に向けて、豊富なクリーンエネルギーが必要となります。

日本は、これらの課題にとりわけ切迫した状況で直面しています。日本は島国であり、国内のエネルギー資源が乏しく、石油、天然ガス、石炭の輸入に大きく依存します。このため、海外からの供給途絶、地政学的な不安定化、価格変動の影響を極めて受けやすい立場にあります。資源エネルギー庁によれば、日本の一次エネルギー自給率は2023年度に15.3%に達し、東日本大震災以降で最も高い水準となりました。これは、原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの拡大が進んだことを反映していますが、それでもなお、他のすべてのOECD加盟国の水準を大きく下回っています。また、米国エネルギー情報局は2023年6月の分析において、日本は2022年の石油需要の97%を輸入に依存していたと報告しています。

これらの数字は、日本にとってエネルギー安全保障が抽象的な政策課題ではないことを示しています。それは国家として取り組むべき必須の課題です。今問われているのは、日本があらゆる国家的目標を実現するため、安価で、信頼性が高く、安定的に確保でき、クリーンで安全なエネルギーを、いかにして確保するかということです。この課題の緊急性は、ますます高まっています。

日本のエネルギー課題

日本の将来のエネルギーシステムは、次の4つの要件を同時に満たす必要があります。

安価であること

エネルギーコストは、経済成長、産業競争力、家計の豊かさ、さらにはエネルギー多消費型産業を日本に誘致し、国内に維持する能力に直接影響します。

信頼性が高いこと

現代社会は、電力を継続的に利用できることを前提として成り立っています。製造施設、交通システム、通信ネットワーク、病院、半導体製造工場、データセンター、重要インフラのすべてが、信頼性の高い電力供給を必要としています。

クリーンであること

日本が環境目標を達成するためには、経済競争力を維持しながら、排出量を継続的に削減していく必要があります。この目標の緊急性は、最新の気候データからも明らかです。世界気象機関(WMO)は、2025年が176年間の観測記録において最も気温の高かった3年の一つであり、過去11年間が観測史上最も気温の高い11年間であったこと、さらに2023年から2025年までの平均気温が産業革命前の水準を1.48℃上回ったことを確認しています。この評価は、日本の気象庁のデータを含む8つの独立したデータセットに基づいています。傾向は明らかであり、対応を迫る圧力は現実のものとなっています。

安定であること

日本のエネルギーシステムは、地政学的な混乱、供給途絶、海外で生じる不測の事態外部からの衝撃に対して強靱性を維持しなければなりません。

有効なエネルギー戦略を構築するためには、これら4つの要件が互いに影響し合い、制約し合うことを認識した上で、すべてを一体として最適化する必要があります。

なぜ原子力が重要なのか

多様なエネルギーポートフォリオを構成する上で、多くのエネルギー技術が重要な役割を担っています。再生可能エネルギーは引き続き導入が拡大しており、将来のエネルギーシステムにおいても重要な電源であり続けます。エネルギー貯蔵技術も進歩を続けています。その他の技術も、それぞれ重要な役割を果たすことになります。

一方、原子力エネルギーには、他にはない高い価値をもたらすいくつかの特性があります。

原子力発電は、次のような特長を有しています。

  • 安全で信頼性の高い大規模な発電
  • 運転時の炭素排出量がほぼゼロ
  • 必要とする土地面積が小さい
  • 運転寿命が長い
  • エネルギー安全保障上、優れた特性を有する
  • 産業規模で実証された運転実績

安全な運転は、これらすべての価値にとって不可欠な基盤となります。原子力産業は、数十年にわたり産業規模で安全に運転できることを実証してきました。また、安全解析、運転経験を活用する仕組み、規制監視を継続的に改善することで、その基盤は時間とともに強化されてきました。同時に、原子力エネルギーは、数十年にわたり大量の電力を継続的かつ安定的に供給できることも実証しています。

安価で、安定的に確保でき、クリーンなエネルギーを求める国にとって、こうした特性を無視することは困難です。運転コストが燃料価格の影響を大きく受けるガス火力発電とは異なり、原子力発電は設備投資が多額である一方、運転開始後の燃料費は比較的低く、予測しやすいという特徴があります。建設リスクと資金調達リスクを適切に管理できれば、このようなコスト構造は、燃料価格の変動や供給途絶に対する有効な備えとなり得ます。電化が急速に進み、電力需要が増加する時代において、予測可能性、強靱性、大規模かつ安定的な電力供給を兼ね備えた電源を、他のエネルギー源で再現することはますます難しくなっています。さらに、先進的な原子力エネルギーシステムには、発電にとどまらず、クリーン水素や産業用途のプロセス熱を供給する可能性もあり、日本のより広範な脱炭素化目標への原子力の貢献を拡大します。こうした点は、多くの国が将来のエネルギーポートフォリオにおける原子力の役割を拡大、または再検討している理由の一つです。また、原子力の導入や運転に関する意思決定は、技術そのものと同じくらい重要であると言えます。

なぜ今なのか

問われているのは、原子力エネルギーが日本の将来に貢献できるかどうかだけではありません。日本が今後顕在化する需要に対応できるだけの速さで、原子力を導入し、活用できるかどうかが問われています。

課題の規模は、多くの人が予想していなかった方向へ拡大しています。日本では、10年以上にわたり電力需要が減少してきましたが、今後は再び増加局面に入ろうとしています。国際エネルギー機関(IEA)の「Electricity 2026」によれば、日本の電力需要は、気温に起因する消費量の増加、データセンターの拡大、電化の進展を背景に、2025年中に約1.6%増加したと推計されています。さらにIEAは、2026年から2030年にかけて、データセンターのさらなる拡大、新たな半導体製造施設の建設、幅広い分野での電化の進展などに支えられ、年平均約1.2%の需要増加を予測しています。したがって日本は、既設炉の高経年化対策を実施し、再稼働を加速し、新たな供給力を計画すると同時に、増大する電力需要にも対応しなければなりません。対応を先送りできる余地は小さくなっています。電化は緩やかな傾向ではなく、急速に進む構造的な変化です。今、原子力の導入について下される意思決定によって、日本のエネルギーシステムがこの変化に対応できる体制を整えられるのか、それとも制約のある中で受け入れざるを得なくなるのかが決まります。

最近の国際的な産業界調査からも、現実認識を踏まえた継続的な取組への意欲がうかがえます。2050年までにネットゼロを達成できるとの確信は低下しているものの、調査対象となった経営幹部の92%が、脱炭素化は自らの組織にとって従来と同様に、あるいはそれ以上に重要であると回答しています。

日本の国家政策も、こうした必要性を反映しています。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成に占める原子力の割合を約20%とする目標が掲げられています。これは2023年の比率のおよそ2.5倍に相当し、再生可能エネルギーについては40~50%とする方針が示されています。計画されている再稼働が大幅な遅延なく進むと仮定した場合、IEAは、原子力発電量が2026年から2030年にかけて年平均約14%増加する可能性があると予測しています。また、経済産業省は、2040年代までに2~5基、2050年代までに11~14基の原子炉を建て替える必要が生じる可能性を示しています。これらの動きは、原子力が傍流の選択肢ではなく、日本の長期的なエネルギー戦略の中核をなすものであることを明確に示しています。

この政策の方向性は、2026年6月、国際原子力機関(IAEA)と経済産業省が、小型モジュール炉(SMR)を含む原子力エネルギー開発と人材・能力開発に関する協力を拡大するため、協力覚書に署名したことで、さらに強化されました。この訪日の際には、IAEAのグロッシ事務局長と日本の高市総理大臣が、エネルギー安全保障と経済発展において原子力が果たす役割の高まりについて意見を交わしました。

原子力の活用に関する課題

社会がより多くの原子力エネルギーを必要とする場合、その切迫した要請に応えられる形で原子力施設を導入し運転することはできるのでしょうか。

歴史的に見ると、原子力発電所は、初期計画から商業運転開始に至るまでに長い年月を要し、時には10年以上を要してきました。サイト選定、環境審査、資金調達、許認可、設計、調達、建設、試運転、起動の各段階には、それぞれ重要な目的があります。しかし、それらの積み重ねで、全体の所要期間は数年ではなく、数十年単位となることも少なくありません。

新規建設は、課題の一部にすぎません。日本は、既設炉の価値も最大限に引き出す必要があります。

福島第一原子力発電所事故以前、日本の原子力発電所は、国内の電力供給の相当部分を担っていました。しかし事故後は、再稼働、規制審査、運転上の制約、社会的信頼の確保をめぐる課題などにより、原子力全体の利用率が低下しました。

東京電力福島第一原子力発電所事故以降、日本は、新たな規制要求、大規模な設備改修、厳格な安全審査、地域社会との継続的な対話を通じて、原子力の安全性向上に多大な努力を重ねてきました。強化された要求を満たした原子炉が段階的に再稼働していることは、規制機関、事業者、政府機関、地域の関係者による多大な努力の成果であり、日本の原子力利用が次の段階へ進むための重要な基盤となっています。

日本原子力産業協会(JAIF)が2026年5月に公表したデータによれば、日本の原子力発電所の設備利用率は2025年度に33.6%に達し、総発電電力量は合計97.2TWhとなりました。この進展は、2011年以降に開始された包括的な審査を経て、原子炉を再稼働させ、運転に復帰させるための継続的な取組を反映しています。この過程では、規制、安全、地域社会との対話に関する多大な努力が払われてきました。同時に、この数字は、なお大きな改善の余地が残されていることも示しています。海外の主要な原子力発電所では、設備利用率が90%前後、またはそれを上回る水準に達することが一般的です。もっとも、これは稼働中の個々の原子炉の運転実績を直接比較するものではありません。日本の設備利用率は、まだ再稼働していない多くの原子炉を含む全体の数値だからです。それでも、既存の資産からより多くのクリーンな電力が得られる可能性が、国全体としてどれほど大きいかを示しています。

設備利用率が1ポイント上昇するごとに、新たな施設を建設することなく、既存の資産から得られるクリーンで信頼性の高い電力が増加します。また、原子力発電所の導入工程を1年短縮するごとに、新たな原子力発電がもたらす環境面、経済面、エネルギー安全保障面の便益を、より早く得ることができます。こうしたさまざまな取組を継続的に改善していくためには、技術的な備えと同時に、規制の予見性、社会的信頼、規律ある運転上の意思決定が必要です。もっとも、具体的に求められる内容は、再稼働、運転期間の延長、パフォーマンス向上、新設といった目的によって大きく異なります。

原子力発電の拡大を進めている国々では、通常、複数の取組を組み合わせて同時に進めています。具体的には、安全性や技術的な要件を満たすが運転を停止していた原子力発電所の再稼働、既設炉の運転期間の延長、現在運転中の原子炉のパフォーマンスの向上、新たな発電所の建設です。日本は、最初の3つにすでに積極的に取り組んでおり、4つ目についても国の政策として方向性を示しています。

これら4つの取組のうち、ある取組には適していても、他の取組には十分に対応できない規制枠組みは、原子力利用全体に不必要な負担や非効率を生じさせます。したがって、各段階において、明確で、対象やリスクに見合い、予見可能なプロセスを通じて、再稼働、運転期間の延長、パフォーマンスの向上、新設のすべてを一貫して効果的に支える規制の近代化は、単なる理念上の目標ではありません。日本の原子力戦略を成功させるための実務上の要件です。

こうした指摘は、過去の意思決定を批判するものではありません。現在の原子力利用を支える制度、プロセス、規制枠組みは、それぞれの時代の課題に対応するために構築され、原子力産業の安全実績の向上に大きく貢献してきました。しかし同時に、根本的な問いも提起されます。20世紀に構築されたアプローチは、21世紀の課題に対して十分に最適化されているのでしょうか。

原子力導入に関するより良い意思決定の必要性

日本の将来のエネルギー需要を満たすためには、原子力の技術だけでは不十分です。根本的な意味で、日本の原子力をめぐる課題は、技術だけはありません。意思決定こそが課題なのです。

そのためには、プロジェクト遂行、システム統合、ガバナンス、サプライチェーンの準備状況、許認可戦略、建設計画、運転開始に向けた準備、長期的な資産管理のすべてにおいて、高い実行力が求められます。

新たな原子力プロジェクトを成功させるには、計画、許認可、調達、建設、運転開始に至る一連の仕組みが、全体として有効に機能する必要があります。そのためには、健全な原子炉設計だけでは足りません。設計の成熟度、許認可戦略、サプライチェーンの準備状況、調達、建設工程、運転に向けた準備、資金調達について、事業主体、設計者、建設者、規制機関、サプライヤ、投資家、運転者、地域の関係者が共通の目標のもとで認識を合わせ、整合のとれた意思決定を行うことが必要です。

プロジェクト遂行と規制の近代化は、別個の課題でありながら、密接に結び付いています。明確で、予見可能であり、対象やリスクに見合った規制上の意思決定は、高い安全要求を維持しながら、設計、投資、調達、建設、運転に関する意思決定を、より適切なタイミングで、より質の高いものにすることができます。反対に、規制の予見性がなかったり、規制要求が安全上の重要度と適切に整合していなかったりすると、プロジェクトのリスクを増大させ、意思決定やコミットメントを遅らせ、安全とパフォーマンスの向上に最も直接貢献するはずのリソースを分散さてしまうおそれがあります。

既設炉についても同じ原則が当てはまります。運転上の意思決定、保守戦略、検査、停止期間中の作業計画、規制プロセスを、安全性・信頼性・パフォーマンスを最も直接的に支える活動に重点化することで、既設炉から国全体にとってより大きな価値を引き出すことができます。

重要なのは、公衆と環境に対する高い防護水準を維持しながら、日本が原子力の導入と運転のあらゆる側面において、より質が高く、透明で、体系的な意思決定をどのように実現していくかという点です。

国際的な産業界調査も、この点を裏付けています。2026年の調査では、ネットゼロ目標に対する課題として最も多く挙げられたのは、政策および規制の明確性であり、その割合は31%でした。これに続いて、実証済み技術の不足が28%、資金調達が22%となっています。また、回答者は、インフラ、サプライチェーン、財政的支援、人材も課題として挙げています。

最も重要なリーダーシップ能力として評価されたのは、戦略的ビジョンと技術リテラシーでした。また、部門横断的な協力やステークホルダーとのコミュニケーションも重要視されています。これらの調査結果は、原子力エネルギーに特化したものではありませんが、日本にも直接当てはまります。すなわち、導入を成功させるためには、明確な政策、有能なプロジェクト組織、強靱なサプライチェーン、持続可能な人材基盤、効果的なコミュニケーション、そして、長期的な国家目標を意識して短期的な取組を進めていくことが必要です。

より良い意思決定の必要性は、原子力にとって新しいものではない

原子力産業は、数十年にわたり、分析能力と意思決定の枠組みを継続的に改善してきました。運転経験を活用する仕組みによって、原子力発電所全体に共通する問題を特定し、是正することができます。確率論的リスク評価は、安全上最も重要な事象や故障モードを明確にします。また、パフォーマンス指標や信頼性向上プログラムは、問題が安全性や運転継続性に影響を及ぼす前に、その兆候を把握し、事業者が早期に対応するうえで役立ちます。

これらの進展は、いずれも共通する基盤の上に成り立っています。すなわち、より良い情報はより良い意思決定につながり、より良い意思決定は、安全性、信頼性、パフォーマンスの向上につながるという考え方です。

今後重要となるのは、これまで培ってきたこうした進展を、許認可、設計、建設、試運転、長期運転、さらには新たな原子炉技術への移行に至るまで、原子力のライフサイクル全体へ広げていくことです。

一つの新たな原則として挙げられるのが「比例性(proportionality)」です。すなわち、あらゆる意思決定が同じ水準の分析・文書化・審査・監視を必要とするわけではありません。必要となる厳格さの程度は、その意思決定が安全上どれほど重要か、どの程度の安全裕度があるか、想定される影響の大きさとその発生可能性、そして当該施設の特性に応じたものであるべきです。

こうした進展は現在も続いています。米国原子力規制委員会(NRC)は、リスク評価を、その規制上の用途や施設の安全上の特性に応じて調整できるようにする指針案を策定しています。この指針はまだ策定中であり、NRCの最終的な見解を示すものではありませんが、より体系的で、柔軟で、対象やリスクに見合った規制に向かう、より大きな流れが現在進んでいることを示しています。

もっとも、このような指針だけで、原子力の導入をめぐる課題を解決できるわけではありません。安全上重要な点に焦点を当て、対象やリスクに見合った規制上の意思決定は、ガバナンス、設計の成熟度、サプライチェーン、建設工事、運転計画、ステークホルダー間の調整の改善と併せて進める必要があります。これらの取組を一体として進めることで、安全性、信頼性、社会的信頼、環境保護を強化しながら、原子力の導入をより円滑かつ効果的に進めることができます。

日本の将来に向けた問い

日本が直面する課題は、ますます明確になっています。日本には、安価で、信頼性が高く、安定しており、クリーンで、安全なエネルギーが必要であり、原子力発電は、その実現に貢献し得る他にはない特性を備えています。そして、この課題への対応は、ますます差し迫ったものとなっています。

問われているのは、これまでの時代に形づくられてきた制度、プロセス、運転実務、導入モデル、プロジェクトマネジメント手法、規制枠組みが、これから日本が直面する課題に十分適したものになっているのかということです。そして、それらがまだ進化の途上にある今、日本がその次の形をつくることに主体的に関与できるのかということでもあります。

これは、安全の基準や規制監視を弱めるということではありません。公衆と環境に対する強固な防護を維持しながら、原子力エネルギーが持つ価値を最大限に引き出すということです。

以降の記事では、原子力安全に関する意思決定が歴史的にどのように進化してきたのか、また、規範的な要求や保守的な最悪ケース評価に基づく判断から、分析に基づき、リスク情報を活用するパフォーマンスベースのアプローチへと、どのように発展してきたのかを考察します。また、決定論的解析と確率論的解析、深層防護、安全裕度、パフォーマンス監視、重要度やリスクに応じて対応の程度を変える考え方が果たす役割を取り上げるとともに、これらの原則を、日本における規制、許認可、運転、既設炉および先進炉の導入にどのように実務的に適用できるかを検討します。

この進化は、保守性や工学的判断の役割を小さくするものではありません。求められるのは、根拠をもって説明できる保守性です。すなわち、判断の根拠が明確で、重要度やリスクに応じて適切に設定され、技術的に説明可能な保守性であり、十分な信頼性と現実性を備えた解析を踏まえつつ、深層防護、安全裕度、運転経験、パフォーマンス監視と組み合わせて用いられるものです。こうした原則は、国際的に認められたIAEAの安全要件や指針にも反映されています。この方向性に沿って、2026年の統合規制レビュー・サービス(IRRS)ミッションは、原子力規制委員会に対し、規制活動全般において、グレーデット・アプローチを一貫性、重要度に見合った形で適用することを強化するよう勧告しました。日本は、これまでに蓄積してきた豊富な経験を土台に、この進化に主体的に関与し、日本の状況、価値観、国家目標に適したアプローチを自ら形づくっていくことができます。

20世紀には、原子力発電を安全に運転できることを実証することが課題でした。

21世紀には、日本の将来を支える豊富なエネルギー供給、エネルギー安全保障、経済的繁栄の実現に向けて、原子力を十分に効果的な形で導入し、運転していくことが大きな課題の一つではないでしょうか。

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